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マネジメントの言葉の意味とは?

地方自治体がマネジメントという言葉を使い始めて30年以上の年月が経っています。
民間企業も含めて日本語ではいまだに経営なのか、経営管理なのか、管理なのかが定まっていません。

本来マネジメント(management)とは、マネージ(manage)から派生した言葉です。
マネージ(manage)には“何とかする”という意味があります。
“何とかする”の反対語は“何とでもなる”です。

マネジメントは、大辞林では「経営などの管理をすること。管理。経営。」とあり、
新選国語辞典では「会社・官庁などの組織体において、一定の目的や方針を合理的に実現するために、
下部を指揮・監督すること」
とあります。
また、「経営管理」は「企業や組織全般における生産・販売・労務・財務などの管理を、
総括的に効率よく調整するなどの全般的な管理」
とあります。

経営+管理=経営管理

「経営」は、自治体や企業などの組織をより良くするための知識の体系、
すなわち、組織目的を達成するための技術です。
民間企業の事例では、組織目的(獲得したい価値)は利益ですから、
「経営」は利益を獲得するための技術であり、合併や買収(M&A)などの投資や貸借対照表などの会計手法です。

「管理」という言葉は、生産管理、品質管理のような用い方をします。
生産経営、品質経営という用い方は違和感を覚えます。
「管理」は、生産や品質に関する活動(=仕事や事業)をより良くするための知識の体系、
すなわち、事業目的(提供したい価値)を達成するための技術です。
製造業の事例では、良い製品を提供するための技術であり、
QCの7つ道具やカンバン方式などの品質管理や生産管理などの技術です。

組織目的の利益を獲得しようとし過ぎると、良い製品が生産できず、より良い製品を提供しようとし過ぎると、
コストが上昇して利潤が少なくなるという、組織目的(獲得)と事業目的(提供)は相反する関係にあります。
この相反する2つの目的を同時に達成するために“何とかする”のが経営管理(マネジメント)です。

管理監督者の覚悟

仕事量が少なく、職員数が十二分に足りていて、予算が潤沢にあれば、大抵のことは何とでもなります。
しかし、地方自治体の現状を見てみると、地方分権の進展により仕事は増大して、
住民の要望がますます高度化、複雑化する中で、予算規模は縮小傾向にあり、
職員も減少するという、相反する難題を抱えています。

管理監督者は、“何とかする”こと、
すなわちマネジメントすることが自らの責任であるとの覚悟を持たなければなりません。
この覚悟を持った人々が管理監督者と呼ばれる人たちです。
地方自治体の管理監督者は、職員減少時代が既に始まっていることを自覚するとともに、
職員の減少は、今まで以上に深刻な問題になっていくことを肝に銘じなければなりません。

地方自治体のマネジメント技術機能させる

NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)の言葉に代表されるように、
マネジメントの必要性が声高に叫ばれ続けてきました。

全国の地方自治体は、マネジメント力の強化を目指し、行政評価制度や成果主義型人事評価制度など、
数多くのマネジメント技術に関する制度を導入してきました。
しかし、多くの自治体において、それらは導入して数年が経過すると、
行政評価シートや目標管理シートなどの様式に記入することが目的化し、いつの間にか形骸化しているのが実情です。

管理部門(総務、企画、財政など)を中心とする関係者の多大な努力にも関わらず、
マネジメント技術に関する各種制度は、期待通りの成果を上げることはできず、“導入すれども機能せず”の状況です。
機能しない理由は、それぞれの自治体ごとに、個別的にはいろいろあると思いますが、共通している理由は、次の2点です。

パソコンの世界の事例で説明します。

「自宅にパソコンを導入しよう!」と思い立ち、大型家電ショップでパソコンを購入してきても、
OS(基本ソフト)としてのウィンドウズをインストールしていなければ、電源を入れてもパソコンは起動しません。
また、ウィンドウズをインストールしていても、
ワードやエクセルなどのアプリケーションプログラムをインストールしていなければ、
文書作成や表計算をすることはできません。
この2つをインストールしていても、
ダブルクリックやドラッグなどのIT用語の意味(リテラシー:読み書き能力・情報活用能力)を理解していなければ、
書類を作成したり、インターネットを活用したりすることはできません。
組織的なマネジメントの実践(基本ソフト)がなく、マネジメント用語の意味の共有化(リテラシー)がなければ、
どのようなマネジメント技術や制度(個別プログラム)を導入しても、それらは期待通りの成果を上げることはできません。

地方自治体では、行政評価制度や成果主義型人事評価制度などで、“組織目標”という言葉を頻繁に用います。
“組織目標”や“事業目標”などのマネジメント用語の意味を曖昧にしたままでは、マネジメント技術は機能しません。
マネジメント技術を機能させるため、また、書くことが目的化している作業を止めるためにも、
職位別のマネジメント上の役割の違い認識し、マネジメント用語の意味の共有化を図り、
自治体マネジメントを学ぶ必要があります。

「者から聞くな、物から聞け」無意識のマネジメント

職員減少時代にあって、自治体の管理監督者は、日々是問題、日々是多忙の状態です。
部下からの報告に頼って、現場に足を運べなくなっています。
「者から聞くな、物から聞け」が守れません。危険な状況になっています。

管理監督者の仕事は、火事を消すことではなくて、
火事が起きない仕組みを構築することですが、火事を消すことで手一杯になっています。

忙しさは、危険な無意識のマネジメント活動を選択してしまいます。
無意識のマネジメントは、多くの関係者の利害が絡み合う“事業”に焦点が当たり過ぎるようになります。
そのため「事業のマネジメント」がマネジメント活動のすべてのような錯覚を起こし、

部長:「課長、あの事業はどうなっている?市長に報告するように言われた。」
課長:「係長、あの事業はどうなっている?部長が市長から至急報告するように言われているらしい」
係長:「主任、あの事業はどうなっている?課長が部長から大特急で報告しろと言われているらしい」

と部長職、課長職、係長職の全員が伝言ゲーム型マネジメント活動に陥ります。

管理監督者は、多忙なときだからこそ、一般的な問題を解決(火事を消し)ながら、
マネジメントの問題を解決(火事が起きない仕組みの構築)しなければなりません。
そのためには、マネジメント活動を意識して行うことを考えなければなりません。

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